DREAMS Award 2013 受賞作品 入賞 木村 大介さん(広島県 42歳)

「挑戦」

約10年前、私はMSと診断された。どうやら二次進行型のようで、再発もないまま体の自由が奪われていった。動いていた右手も自由に動かなくなったため、車椅子も手動式から電動式に切り替えた。ちょうどその頃、リハビリの先生から「広島国際平和マラソンに参加してみないか」と誘いを受けた。平和マラソンは知っていたものの「車椅子の部」があるとは知らなかった。はじめは出る気はなかったが、周りの人の勧めもあって、参加することを決意した。大会が近づいてくると介護に携わってくださっている皆が応援してくれた。当日車椅子の後方につけて走る応援旗にそれぞれメッセージを書いて準備してくださった。皆の気持ちが嬉しかった。私も自分自身に気合を入れるためハチマキに「気合注入」と書いた。リハビリの先生に手伝ってもらい、左手で一生懸命書いた。妻には内緒でタスキも準備し、タスキに「智子ありがとう」と書いた。マラソンのゴールで妻にサプライズする作戦だった。何度か家の周りを走り練習して当日に備えた。大会当日助っ人として、リハビリの先生と娘が付き添ってくれた。「気合注入」のハチマキを締め気合を入れてスタートした。スタート付近は調子よかったが、途中で左手も思うように動かせなくなった。そこですかさず先生と娘が手を貸してくれた。ゴール間近になんとか左手も動かせるようになり自分でレバーを押して操作した。サプライズのためのタスキを掛けてもらいゴールで待っている妻の元に向かった。タスキを見た妻は何を思うだろうか? 喜んでくれるだろうか? 妻が見えてきた。「お帰り」と妻が迎えてくれた。妻は泣いていた。妻の「お帰り」は何年ぶりに聞いただろうか。いつも待ってばかりだから・・・。達成感があった。久しぶりの達成感だった。この写真の顔がそれを表している。とても気持ち良かった。これからも色んなことにチャレンジしようと思った。あの達成感を味わうために。